化粧品を使うと肌が早く歳をとるという現代の不幸な状況は、肌を理解せずに感触だけで化粧品を選択し、使用することに、根本的な原因があります。そういう不幸を避けるために、まず、正しいお肌と、化粧品の知識を持つことが大切です。「やさしい化粧品のはなし」ではそうした正しいお肌と化粧品の仕組みを、分かりやすく解説しています。
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はじめに−化粧品の現実
 昭和20年代末から30年代初期にかけて、化粧品の原料とヒフの関係を理論的にとらえ、合成界面活性剤と化学添加物がヒフに与える毒性を化粧品公害と名づけて指摘したのは小沢王晃、ゼノアの創設者です。
シャンプーが合成洗剤であり、バリアゾーンをこわしていろいろな化学添加物をヒフに入れてしまうこと、そしてシミやシワの大きな原因になっていることは今でこそ知られていますが、当時は見向きもされませんでした。
 一方、このようにしてふえた化粧品公害が消費者の反発をまねき、添加物に対する批判や自然化粧品の流行を生みました。
 化粧品の原料には油脂や石鹸が欠かせませんが、これらはみな酸化や腐敗しやすいので添加物が必要です。そこで化粧品業界は巧妙な手段を用いました。
 油脂のかわりに合成樹脂を、石鹸のかわりに合成洗剤を使えば酸化防止剤も防腐剤もいらないことを利用したのです。合成洗剤も合成樹脂も表示義務がないので「無添加です」「自然化粧品です」と宣伝できたのです。
 粘り気はあるが油を使っていない乳液やクリームは、水溶性の合成樹脂。ウォータープルーフのファンデーションや、濡れた唇の口紅は、水に溶けない合成樹脂の応用です。
 こうして今、女性は合成洗剤の洗顔フォームで顔を洗い、合成樹脂製の乳液をすりこみ、合成樹脂製のファンデーションや口紅を「落ちないし、仕上りもきれいだし」とよろこんで使っているのです。
 一方、食品添加物は動物実験でその動物が一生涯毎日食べてもまったく影響しない量の100分の1から、各食品ごとにその使用量が制限されています。問題は多々あるにしても一応の論拠があります。
 化粧品の許可量は食品の10倍程度ですが、その論拠ははっきりしていません。物質を吸収する腸皮にぬる食品とちがって、物質の侵入を拒否するヒフにぬるのが化粧品ですから、そういう意味でおおまかに10倍ぐらいならよかろうとしたのでしょうか。
 化粧品はヒフにぬるものです。ヒフは物の侵入を拒否する皮ですから添加物も入りにくいのです。制限が食品ほどきびしくないのも当然です。
 ヒフには角化層というバリアゾーンがあって異物の侵入を防いでいますが、万が一侵入したときは白血球やランゲルハンス細胞がその物質を捕らえ、捕らえそこなったものは「かぶれ」という現象をおこして排泄します。
 こういう自衛のためのシステムも合わせてヒフのバリアゾーンと定義してもよいと思いますが、いずれにしろパラベンやエデト酸などの添加物をふくんだ石鹸を何十年も使ってきたのに体のヒフが今もきれいなままであることを確認していただきたいと思います。
 化粧品のサンプルを使ってみると、しっとりとヒフが潤います。一見、若返ったよぅな気がするでしょう。「植物の潤い成分が」などという説明書を見ると「なるほどねえ」と思うにちがいありません。
 しかし、ヒフが求めている最高のクリームは皮脂です。その皮脂はべとべとして気持ちわるいのです。ヒフには「つけると気持ちのわるい皮脂(親油性化粧品)」が必要なのに、化粧品業界が開発し製造してきたのは「つけると気持ちのよい化粧品(親水性化粧品)」だったのです。近代化粧品の問題の根幹がここにあります。
 合成樹脂なら刺激がなく、かぶれない化粧品を作ることができます。しかしヒフは合成樹脂にまみれて進化してきたのではありません。ヒフの環境が汚染されて、ヒフはますます弱くなります。すると一生、無刺激の合成樹脂化粧品しか使えないヒフになってしまうでしょう。
 ここらで私たちは基本に帰って、化粧品はどうあるべきかを考える必要があるのではないでしょうか。
 1999年5月
なんとか辿り着いた65周年に感謝して
(株)東京美容科学研究所
(旧ゼノア化粧料本舗)
代表取締役 小沢王春
1.クリームのすりこみ方
 むかし「やせる石鹸」というのが人気になった。そんなものがあるはずないのに、みんなやせる石鹸をほしがった。「やせた?」と聞いてみると、「やせたような気がする」という。ゴシゴシ洗うとヒフがかさかさになってやせたような気がしないでもない。つまり錯覚なのだ。
 クリームを、「ヒフにすりこむ」というのも錯覚だ。ヒフの中にクリームは入らない。クリームはヒフをおおっている厚い外壁(角質層)にしか入らないのである。第一、ヒフからクリームや栄養が入ったのでは大変だ。口や胃腸などは不要物と化してしまう。
 化粧品は、外壁にしか入らないから安全なのだ。安全だから危険な薬品とは法的に区分され、化学添加物も食品の数倍量の配合が許可されている。
 たとえば、デヒドロ酢酸ナトリウムという保存料は、食品には、0.05%しか添加が認められていないが、化粧品には0.5%、10倍の添加が認められている。
 外壁をこわすと中身のヒフは不健康になり、老化してしまう。壁の主成分はタンパク質と脂質であるから、壁から脂質をとりすぎたり、または壁のタンパク質をこわすような原料を化粧品に使ってはならないのは当然だ。
 戦後、化粧品による被害が続出して、いわゆる化粧品公害が問題化したのは、化粧品の近代化に貢献した化学合成原料の中に脂質をとりすぎたタンパク質を破壊したりするものがあったからだ。
 さらに薬効成分や栄養をヒフに入れようとして、ヒフの壁をこわすような薬品(浸透剤)を乱用したからである。
 シミや小ジワのようなヒフの老化現象に悩むと「良い化粧品はないか?」と思う。つまり多くの女性がヒフを若返らせる薬効成分(代謝促進剤)を期待したが、薬効成分はヒフの壁にさまたげられて中に入ってくれない。
 薬効成分をヒフに入れるには壁をこわさなければならず、壁をこわせばヒフそのものもこわしてしまうというわけだ。栄養クリーム、薬効クリーム、ホワイトニング化粧品などの矛盾がここにもある。
 クリームは角質層というヒフの壁にすりこむものである。では、何のために壁にすりこむのか? 壁が弱いとヒフを守れない。だから壁を補強する。このためにクリームを壁にすりこむのだ。
 食べ物がヒフを作り、そのヒフを壁が守るのである。
2.化粧品は三つにわけて考えよう
 今日の日本人は、宣伝広告のウリ言葉にふり回されて、化粧品の本来の目的を忘れている。ヒフが衰えはじめると理性を失って「肌を若返らせる」(そんな化粧品はあるはずがないのに)と宣伝する化粧品にとびついてしまうのである。
 化粧品は基本を知っていなければ正しい選択も使い方もできない。 石鹸やシャンプーをふくめれば全国民が化粧品を使っているのに、学校もその教育をしていない。したがってだれも化粧品の基本を知らず、宣伝や店員の説明をそのまま信じ、化粧をしてヒフをいたずらに老化させてしまうのだ。
 こういう事情だから、まず薬事法による化粧品の基本からはじめよう。化粧品は、
1.ヒフを清潔に保つ   洗顔化粧品
2.ヒフを健やかに保つ   基礎化粧品
3.ヒフを美しく装う   メイク化粧品
の3種である。
 この3点の化粧品について、基本的な注意をあげてみると、
1.洗顔化粧品は、洗浄力と感触のよさを追及しすぎて、本来は残さなければならない最低限の皮脂まで洗い流し、その分、脂のかわりに水をヒフにふくませてしっとりさせるクレンジング類が多い。洗顔フォームを代表とするこのようなクレンジング類は、後述するように合成洗剤の変種であって、ヒフの健康をこわす。
2.基礎化粧品は皮脂の代用品(これも後述する)なのだから、本物の皮脂に近い性質のものでなければならない。メイクの下地は基礎化粧品としてメイクをヒフから遮断、隔離できるものでなければならない。
3.メイク化粧品は生理的にはヒフの上着(下着は基礎化粧品)だが、最大の目的は色の美しさなので、色を重視するあまりヒフにあたえる影響を無視しがちである。たとえば毒性をふくむタール色素やレーキ類(タール色素と重あるいは軽金属、またはタール色素とタンニンの化合物)を使用することになり、これらは特に有害だ。
 だからメイクをするときは、メイクをヒフから隔離して接触させない下地が必要なのである。
3.ヒフの壁は脂紙
 シャワーをあびると、若く健康的なヒフほど水を強くはじく。ヒフの表面には脂が分布しているからで、この脂を皮脂という。
 年をとると皮脂はだんだん少なくなる。そのぶんヒフのかさつきがひどくなって、冬は特にそうなるが、それでも夏にはかなり出る。このように夏と冬では皮脂の量がまったくちがう。若者には想像できまいが、年をとって乾燥肌になると夏はひどく若返った気持ちになるものだ。皮脂がよく出る夏は熟年にとって夢の季節なのだ。暑いときに皮脂がたくさん出て脂光りする女性は総じてヒフが健康でシミになりにくい。
 夏に皮脂が出てくる理由は簡単だ。巣ごもりをする冬とちがって、夏は外で活動する季節なのでヒフが傷つきやすい。それでヒフを守るために脂が出てくるのである。
 脂が皮を守るのは常識だ。野球のグローブもラグビーのボールもワゼリン(腐敗しないので)をすりこんで補強していることからも明らかである。
 次に女性と男性をくらべてみる。女性は寿命が長いのに、男性にくらべてヒフの衰えがはやい。皮脂が男性よりずっと少ないからだ。
 数百年前、進化の途上で人間は体毛を失った。
そのぶん、ヒフの表面を何かで補強しなければならなかった。
 こういうヒフを守るには脂をすりこむしか方法がない。体毛を失った人間はほかの動物よりずっと多い皮脂線を持つことになったのだろう。
 毛のあるところは皮脂があまり出ないが、毛のないところは暑いとき、やたらに皮脂が出るものだ。猫や犬が人のように皮脂を出したのでは毛並みがよじれてペットにならない。
 ヒフには壁がある。外壁の角質層と内壁の顆粒層だ。ゆで卵を割ってみると、かたくて厚い外壁と、やわらかくて薄い内殻によって守られていることがわかる。ヒフも同じなのだ。
 この壁は生きている組織ではない。単なる壁だ。単なる壁だから栄養を与えても役に立たない。脂をすりこんで物理的に補強するしかない。化粧品会社がコラーゲンとかシスチン、スクワランなどを薬効があるかのように宣伝するのは詐欺である。
 角質層は脂をふくんだ壁である。油紙、実際は脂紙である。シャワーをあびると水をはじく脂紙なのだ。ヒフはこの脂紙で守られている。脂紙をやぶるとヒフも不健康になって老化が進んでしまうのも当然といえよう。